磨き抜かれたエコキュート
女性の教育を急がなければ、人口減少計画の実現は危うい。
現在の食糧事情は人口増加率の半減がなんとしても必要であることを示唆している。
困難な作業をともなうことは言うまでもない。
だが死亡率の増加による人口増加率の鈍化を、手をこまねいて見守らなければならなくなるような恐ろしい事態は、どうしても避けたい。
だが乳幼児死亡率が現に多くの途上国で高くなっているのは、その恐るべき事態が起こりうることを示唆するものであると受け止めねばならない。
日本はこの種の試みに指導性を発揮するのに良い立場にある。
なぜなら一つには、日本は実際にそれをやり遂げたからである。
日本には人口抑制に成功した経験がある。
日本は貴重な経験に基づいた権威ある助言を与えることができる。
二番目に、日本には経済力がある。
人口増加率を速やかに鈍化させるためには、マーシャル・プランのような対外援助が必要となるであろう。
ちょうど米国が一九四0年代後半、その圧倒的な経済力をもってマーシャル・プランに着手したように、日本は今日他国をはるかに凌ぐ強力な経済力をもっというユニークな立場にある。
日本はこの経済力と経験を生かし、短期間に人口増加率を半減しなければならないという世界的課題にリーダーシップを発揮すべきである。
これはここにおられる福田元総理や加藤女史など多くの諸先輩方が、四0年前に先見の明をもって手掛けられた伝統を踏襲することでもある。
国連人口基金と協力しながら、日本が人類の抱える未曾有の緊急課題にリーダーシップを発揮することができると私は確信している。
R・R・ブラウン(米W・ウォッチ研究所長)大来一ブラウン氏からは世界の現状について説得力あるお話をうかがえた。
私自身W・ウォッチ研究所の出版物を多数購読しており、ご本人ともワシントンでおめにかかってから二0年来の知り合いである。
当時はW・ウォッチ設立前で、海外開発審議会で活躍されていた。
国連人口基金(UNFPA)は三年前にN・サディク女史の前任者である故ラフアエル・サラス氏の功績をたたえた第一回サラス記念講演を開催し、戦後の発展と経済成長を背景とした日本の人口プログラムを取り上げた。
また、ローマクラブが「成長の限界」に関する報告を、ブルントラント委員会が持続的開発に関する報告を行ない、開発と環境の関係をめぐる考え方が変遷してきた様子を紹介した。
持続的な成長と開発の必要は、「成長の限界」報告にも-謡われている。
当時この報告はあまりに機械的で楽観性に欠けるとして、批判を受けた。
また、技術の選択や市場構造を通じて成長を持続するのは可能であるとの意見もでた。
私はロ−マクラブの執行委員会のメンバーとして、マサチューセッツ工科大学(MIT)のデニス・メードウ氏等が編集した同レポートに、成長の限界とは貧しい途上国における開発努力を否定するものではないという補足をすべきだと主張した。
つまり膨大なエネルギーを消費する先進工業国が成長の限界を受け入れる一方で、貧しい国々では成長・開発努力が促進されるべきだと明言する必要があったのである。
「グローバル二000」(「二十一世紀への進入、西暦二000年の地球」)は、カ−タ−政権下で米国政府の環境問題委員会が、ローマクラブ報告を受けて一九八0年に出版したレポートである。
これにもやはり将来への懸念が読み取れる。
熱帯雨林の乱伐が現在のベースで進めば、西暦二000年には四0パーセントしか残らず、多くの生物が絶滅の危機にさらされるという。
「グローバル二000」は日本語にも訳され、広く読まれた。
当時の鈴木首相と鯨岡環境庁長官がこの問題を重視した結果、一九八一年には環境庁の後援で地球環境委員会が発足し私が委員長を仰せつかった。
一九八二年の中間報告は、海外援助プロジェクトのあり方として、途上国が自然環境を破壊することなく発展できるように支援することが望ましいとしている。
また地球環境を考える国際的な賢人会議設立の必要も指摘した。
それを日本政府が実行に移したのは、人類と環境に関する国連ストックホルム会議を受けてナイロビで開催された一九八二年の第二回国連環境会議の席上でのことであった。
原環境庁長官は、地球環境のために国連特別委員会を設置するよう呼びかけ、日本が費用の大半を負担することを申し出たのである。
国連はこれに応じて当時ノルウェーの野党、労働党リーダーであったブルントラント女史を委員長とする特別委員会を設立した。
副委員長はマンスル・ハリド・スーダン元外相で、世界の各国から二0人の専門家が選出された。
このようにして「環境と開発に関する世界委員会」は一九八三年秋に正式に発足した。
同委員会は、世界中から意見を聞いて提言を行なうために二年半の期間を与えられた。
「われら共有の未来」と名づけられた最終報告は、一九八七年二月に東京で採択されオックスフォード大学出版会から出版された。
その間ブルントラント女史は政権の交代により、ノルウェーの首相となったが、仕事が完結するまでは委員会の仕事を続けるとして、その決意を表明した。
同女史はH大学で公衆衛生学を専攻し、四七歳で首相になる前には環境大臣を五年間務めた、すばらしい学者であり同時に政治家でもある。
「われら共有の未来」は多数の言語に訳され、環境・開発問題に対する国際的な意識を高めるのに貢献した。
たとえばトロント・サミットの経済宣言三六項目のうち、三項目が持続的な開発のコンセプトを支持していた。
パリ・サミット宣言三六項目のうち一九が環境問題についてであり、政治指導者の環境問題に対する関心の高さがうかがえる。
環境問題は食糧、エネルギー、工業化、住宅政策等の結果として生じた面もあるため、専門家まかせにするわけにはいかない。
また環境問題は、第一次産品の貿易や国際経済、対外負債の状況にも影響されるので、グローバルな視点からとらえる必要がある。
荒廃した環境を未来の世代に受け渡す事態を避けるためにも、各国組織や国際機関は持続的な開発をめざした政策を採用すべきである。
地球を破壊し放題にせず、持続的開発をめざす決意をせねばならない。
ここでR・ブラウン氏に質問したい。
事故の危険性や廃棄物処理の観点から、原子力を将来のエネルギー源として疑問視されているようであるが、原発は今日、日本の発電の三割を、フランスの発電の七割を占めている。
太陽エネルギーは量とコストの面で原発や化石燃料に代わる見通しが立つのだろうか。
将来、食糧生産国が輸出する余裕をもたないという事態を予想し、また食糧に対する世界的な需要を考えた場合、日本も食糧を米国に依存する割合を減らすべきであろう。
事実日本の自給率は、カロリー供給ではすでに五0パーセントを割っている。
食糧問題は市場の自由化の問題にも当然かかわってくる。
また海上で食糧を生産するという可能性についてもうかがいたい。
中にはすでに実用化されて国の経済に貢献しているものもある。
水力や木材は原発よりエネルギー効率がよい。
太陽電池の価格は低下傾向にあり、日本は世界でも有数の生産量を誇っている。
電気の通っていない途上国の小さな村では、すでに太陽電池が他のエネルギーに対して競争力をもち始めている。
これは物理学の真の進歩が、原子力よりむしろ風力発電装置や太陽電池にあることを示す良い例である。
風力も代替エネルギーとして有効であることが実証されている。
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